2枚組、全17曲となる待望のニュー・アルバム『Long Voyage(ロング・ヴォヤージュ)』
愛する犬たちも乗せて、七尾旅人、新たなる大航海のはじまり。
過去最大規模となるゲストプレイヤーたちとの生命感にあふれるやり取りで結実した「最も自分らしいレコード」。少年時代からの念願だったというバンド&ストリングス・アレンジで産声をあげた、24年目のマスターピース。
パンデミック、そして戦争、日々何かに揺さぶられ続ける世界の片隅で、耳を澄ませ、目を凝らし、あらゆる時空間を横断しながら映画的に紡がれる90分間の忘れがたいストーリー。
長い航海の果てに、あなたが見つけるものは?
90年代末の登場以来、トレンドと一定の距離を取りながら独自のオルタナティブ・ポップを生み出し続けてきた七尾旅人。
当初は奇異な物として捉えられがちだった彼の音楽だが、過酷な時代と真摯に向き合おうとする印象的な創作の数々でやがて多くのフォロワーを生み出し、「七尾旅人以降」とも言える刺激的なインディペンデント・ミュージックシーンが広がり、この国のシンガーソングライターの佇まいは少しずつ変わっていった。
肉親の不慮の死をきっかけにレコーディングされた前作『Stray Dogs』のツアー終了直後から世界を覆ったパンデミック。いちはやく規制の対象となり、追い詰められていった音楽シーン。そんな2020年からの2年間で書き溜められた楽曲を中心に、厳選された17曲が並ぶ今作『Long Voyage』のフィジカル版は、2枚組アルバムとしてリリースされる。過去にも『ヘヴンリィ・パンク:アダージョ』『911fantasia』『兵士A』といった2枚組、3枚組規模のコンセプチュアルな大作を複数リリースし、アルバム・アーティストとして世界に類型がない新たな作品像を提示し続けてきた七尾だが、そんな試行錯誤の果てにある今作の、奇跡的ともいえる豊穣なポップネスはどうだろう。濃密な90分があっというまに過ぎて行く。音楽の旅の過程で絆を深めた戦友たちとのストーリーは、七尾旅人新章と呼べる充実作となって結実した。
前作「Stray Dogs」ツアーで結成され、今作に至る大きなきっかけとなったストレイ・バンド (Kan Sano、小川翔、Shingo Suzuki、山本達久) は七尾のこれまでの歌の佇まいを損なわぬまま確かな手つきで精妙なバンド・アンサンブルを成立させた。さらに細井徳太郎、石若駿らジャズの次代を担う俊英たちとのもうひとつのバンド編成が生み出す自由闊達でフリーキーな躍動感。ショーロクラブ沢田穣治のコンダクトによる豊潤なストリングス、血を分けた家族のような親密なサウンドで歌に寄り添う梅津和時、石橋英子、瀬尾高志、Dorian。ミックスおよびマスタリングには、奥田泰次、キムケンと、七尾が最も信頼してきた、世代を超えたソウルメイトたちが並ぶ。
2020年パンデミックの只中で開始された、対コロナ支援配信「LIFE HOUSE」。オンライン上に生まれた架空のライブハウスとして、音楽関係者、医療従事者、子供たちなど、様々なゲストをリモートで繋ぎながら対話を重ね、収益の全てをゲストおよびゲストが指定した支援先へと届け続けてきた。
そして、デルタ株が猛威を振るった2021年、自宅に放置され生死の境を彷徨う感染者家庭に食料を届ける「フードレスキュー」の活動は、SNSや、TV、新聞などのメディアで注目・拡散されることで、多くの賛同者を生み出し、分断された人々をつなげる架け橋となった。この時の本人によるコメント「社会の片隅に取り残された命に対して、文化が何をなし得るか考え続けていきます」その言葉は今作においても裏切られることがなかったようだ。
誰もが岐路に立たされたこの時代に、嘘偽りない風景と共に、我々を優しく包み込む「未来のこと」、モータウンから脈々と受け継がれる名デュエット曲の最新型「ドンセイグッバイ」は大比良瑞希をパートナーに迎えた賛美歌のようなソウル・バラッド。Twitterで親しまれている愛犬たちとのユーモラスな日常から想像を越える世界へと誘われる「Dogs & Bread」など、いつの間にか口ずさんでしまう珠玉のポップソングたち。入国管理局における在留外国人の人権問題をテーマとした「入管の歌」、コロンブスの新大陸発見から、ジョージ・フロイド氏の悲痛な死に端を発するミネアポリス反人種差別デモまでを壮大なスケールで描き、社会構造のなかで虐げられる誰かの魂を鼓舞しようとする異色の料理ソング「ソウルフードを君と」、生音主体のトラック上、ギル・スコット・ヘロンやビズ・マーキーを思わせる七尾ならではの滋味あふれるスポークンワーズで、壊れかけた小さな家族の情景を描写して行く「Wonderful Life」など、これまでなかなか日本語の歌になりづらかったはずのトピックをひとつひとつ歌に変えて行く執念と情熱。そして、ルイ・アームストロング「この素晴らしき世界」のような永遠のスタンダードを想起せずにはいられない大名曲「if you just smile (もし君が微笑んだら) 」。
人類のアテンション・スパン (集中できる時間) が短くなり続けている現代、1曲1曲の消費されゆく速度が限りなく速まった時代の中で、今も愚直に人生のかすかな輝きを、隘路を、そして社会の片隅に生きる誰かの小さな叫びを美しいメロディに変えながら骨太な音楽作品を作り続ける七尾旅人は、忘れられた世界の魔法をわれわれに伝えようとするウィザードのひとりなのかもしれない。
1秒先も見えない狂った季節のなかで、それぞれのハードな航海は続いていくが、現実生活の中では頼りないはずのもの___たとえば音楽や、見ず知らずの人々の間でふいに交わされる親愛の情が、ときに頼もしいコンパスや海図になり得ることを、このアルバムは語っているように思う。
七尾旅人、最新作『Long Voyage』が待望のヴァイナル化。
LP2枚組のアナログ盤が完全限定生産で2023年7月7日に発売決定。
前作アルバム『Stray Dogs』のツアー終了直後から世界を覆ったパンデミック。そんな2020年からの2年間で書き溜められた楽曲を中心に、厳選された17曲が並ぶ七尾旅人の最新アルバム『Long Voyage』が完全限定生産・LP2枚組アナログ盤として七夕の日にリリースされます。
歌とギターのみでさまざまな物語を描き出し各地のオーディエンスを驚嘆させてきたシンガーソングライターが、今作で自身初となる全面的なバンドレコーディングに踏み切るきっかけとなった盟友ストレイ・バンド(Kan Sano、小川翔、Shingo Suzuki、山本達久)との出会い。彼らをはじめとする過去最大規模のゲストプレイヤーたちと音楽を奏でることで、風通しのよい、より自由なサウンドスケープを獲得しながら、パンデミック以降の世界を巡る、壮大な船旅が幕を開けます。それぞれの楽曲に新しい命を吹き込むバンド・アンサンブル、ストリングスの響きは、アナログ・エディションの暖かなサウンドでその真価を発揮しています。
物事の消費速度が限りなく速まっていく現代の中においても、生の輝きを、そして社会の片隅に生きる誰かの小さな叫びを、愚直なまでに追いかけ、どこまでも美しいメロディに変えてゆく七尾旅人の歌声。この——どこまでも、まわりつづける——マジカルな円盤をゆっくりと裏返しながら耳を澄ませる時、そこにはさまざま想いを巡らせることが出来る、かけがえのない時間が流れていることでしょう。
街の片隅で音楽のたしかな火を灯し続けてきたレコード・ショップに訪れ、ポップヒストリーを彩る名盤たちの棚から見つけだしたい。そんなレコードがまた1枚生み落とされました。
初期6作品が各配信サイトで解禁
これまでのディスコグラフィーからみんなでプレイリストを選曲する特設サイト"My Best of 七尾旅人" がオープン。
リスナーの皆さんからの選曲もお待ちしております。