My Best of 七尾旅人

河合宏樹

七尾旅人さんの楽曲を初めて聞いたのは、高校生の時、よく通っていたレコード屋さんで、911FANTASIAのBOX感に惹かれ、ジャケ買いしたのを覚えています。再生ボタンを押してからCD3枚分を夢中に聞き、幼少期からおじいちゃん子で、よく祖父の戦争体験を聞かされていた僕にとって、このアルバムは運命の友達に知り合った感覚で、その後の自分の映画制作の方法論にも圧倒的な影響を与えました。もう時効かと思いますが、学生時代の自主映画の処女作で、『生の申し子』『人間じゃない』にインスパイアされて無断で楽曲も使わせて頂いた経験もあります。
そんな僕が東日本大震災を機にドキュメンラリーを志し、とある瞬間に旅人さんと出会い、縁を深めて『兵士A』の映像を残させて頂けたことは、自分の歴史の最大の出来事です。旅人さんのアルバムについてすべて語ろうとするとキリがないのですが、間違いなく僕が人生で一番影響を受けたシンガーソングライターであり、生き方や考え方含めて人間として、先輩として愛している作家です。旅人さんの楽曲を生涯聞き続けたいと願ってやみません。