My Best of 七尾旅人

相羽崇巨

今から3年前の2019年5月の愛知県のフェスで。
それまで僕は重度な障害があることを引け目に感じ、仕事も何もせずどうせ自分なんかと諦めの孤独の中でゲームと向き合う日々、
そんな変わり映えしない退屈を一瞬にして吹き飛ばすような、旅人さんとの衝撃的な出会いをあの嬉しかった息づかいを今でも鮮明に覚えています。

呼吸器をつけど根性ガエルのシャツを着て客席から見つめる僕に「
君めちゃくちゃかっこいいね」と声をかけてくれたのが初めてでした。それからリクエストを聞いてくれてサーカスナイトをステージから降り、肩と肩が触れ合う場所まで歌いにきてくれました。

そのとき初めて障害を持っていることを称えられたかのように生きていてよかった、自分のこのありのままの姿が愛おしいなと不思議と受け入れられたのです。
その年に行われた全感覚祭では暑いからとステージにお呼ばれして僕の唯一できる朗読と「きみはうつくしい」のセッションやトリエンナーレでゲストとしていくつかの朗読セッションなど短期間でも濃厚で今まで手の届かなかった世界を可能性を最大限に見せてくれました。

そんな出会いに拍車をかけるように車の中で旅人さんがボソッと「相羽君には音楽、歌を作ってほしい」と提案されてから今に至るまで僕の人生は音楽で歌を作ることで満ちあふれるようになりました。

旅人さんと共に過ごした魔法のような時間と経験は孤独な苦しみや諦めを心から無駄じゃないと抱きしめてくれました。
音楽無知でしばしば怒られることも多い僕ですが、今回この企画を機に旅人さんとの出会いを振り返りながら旅人さんの作ってきた曲にじっくり触れてみました。

僕の中では特に「ヘヴンリィ・パンク:アダージョ」には鮮明な懐かしさを覚え、突然頭の中で稲妻が走ったような衝撃で心を打たれました。
少年時代から今までの僕を走馬灯のようにふつふつと思い出させてくれるのです。楽しかったこと、辛かったこと、悲しみや怒りの感情も誰にも理解できないような孤独な暗闇さえもいつかは光りが差し込むといいなと決して強引ではなくゆっくりと優しく語りかけて抱きしめてくれる感覚に誘ってくれました。
まさに大人たちへの子守歌、精神安定剤のようなそんなアルバムになっていて、旅人さんとの出会いを重ねては涙が溢れそうになります。心から出会ってくださってありがとうございます。

この僕という人生が愛おしく輝いてみえるのも七尾旅人さんがいてくれたからこそです。旅人さんが多くのリスナーやミュージシャン達、すべての人々を愛してきたように僕も誰かの人生に寄り添っていられる人でいようと思います。

10曲なんてとても選びきれなくて数日悩みに悩んでしまいましたが、溢れんばかりの名曲に旅人さん自身に今までとこれからの船出に心からの祝福を贈ります。本当に本当におめでとうございます。。

旅人さんの大きな暖かい背中、音楽を聴きながらこれからも再会を糧にしながら命のある限り生きてゆきます。

相羽崇巨