真っ暗で空っぽの穴。ときどき起こる風が洞のなかでうごめいて、獣のような地鳴りのような音がする。そこではなにもかもが不明瞭で、わたしは自分自身を痛めつけることによって、辛うじて自分がまだ生存していることを知ることができる。それは、果てであってここでもあり、はじまりも終わりもしない。その深淵が、ごく稀に別の深淵と接続するときがある。七尾旅人さんの音楽は、わたしにとって、そういうものです。音楽を続けてくださっていることに、こころから感謝します。
メモ:911FANTASIAが大好きですが、絶対にアルバムで通して聞きたいので、プレイリストには楽曲を入れることがきませんでした。これを読んでいる方で、未聴の方は、絶対に通してアルバムを聞いてください。
僕が旅人さんから特に影響を受けたと思う11曲を選曲しました。
旅人さんの歌、そして世の中に蔓延っている「悲しみ」を掬い上げる姿勢は、
今の自分の中に確かに根付いています。
音楽を好きになりたての16歳の頃、好きな曲をCDに焼き、それを友人と交換する、という行為を頻繁にしていました。
ある日、暗い曲をテーマに交換することになり、受け取ったCDにガリバー2が入っていました。それが七尾さんの音楽との出会いです。
ガリバー2を聴いて、TSUTAYA渋谷店に行き、七尾さんのCDを置いてあるだけ全部借りました。雨に撃たえば…! disc2をエンドレスリピートする中で「どうして私はdisc1の方も借りなかったのだろうか」と思っては頻繁にCD屋で在庫を確認していました…笑
今回選曲させて頂くことになり、聴き直しましたが、自分に水をやりながら首を絞めているような感覚が蘇ってきました。
サブスク解禁のおめでたいときに湿っぽいことを書くのは気が引けるのですが、七尾さんへの気持ちを書ける機会なので正直に書くと、18のとき先述した友人が自死しました。本当につらく、お酒にも煙草にもクラブにもどこにも逃げられず、ただただやるせなさと向き合うことしかできない閉塞感の中で聴けていた音楽が、七尾さんでした。
サーカスナイトをカバーして七尾さんに聴いて頂けたり、七尾さんとお会いしたり、七尾さんのライブを観たり、大好きな人がお子さんに”コナツ”という名前をつけたり、”コナツ”の漢字を私の名前の漢字から取ってくれたり、色んなことが起きては「生きてると美しいこともあるって証明してやる、七尾さんの新曲聴けるの羨ましいだろ!!!!」と心を立て直しました。
七尾さんが、ずっと、優しく面白くかっこよくい続けてくれていることが心の支えになっています。
暗い曲というテーマで知った七尾さんの音楽ですが、私にとって七尾さんの音楽と七尾さんの在り方は、暗くありません。暗い場所に見つける光の強かさです。
CDに焼いて渡さなくても、5秒で七尾さんの曲をシェアできること、嬉しいです。ありがとうございます!大好きです!
・ローリンローリン
(七尾さんの曲ってどれもめちゃ優しいんですけど、この曲は特に自分が何もしなくてもどこか良い場所に運んでいってくれる感じが好きです。エモいです。一番好きです。)
・サーカスナイト
(サーカスナイトはベースとギターがなんかセクシーな感じが好きで、ここは楽園じゃないけど、描ける限りの夢の中でって歌詞が、現実主義の私にはキュンと来るリリックで好きです。)
・きみはうつくしい
(一緒懸命頑張ってる姿ってやっぱ素敵だと思うんですよね。私は努力が嫌いな人間なんですが、この曲はなんか奮い立たせてくれると言うか頑張らなきゃ!って思える曲で胸が熱くなる感じが好きです。)
・スロウ スロウ トレイン
(切なくて好きですー。失恋した人とかに聴いて欲しい一曲!)
・Confused baby
(人生よく色々やらかすんですが、こんがらがってるbabyとか、助けられない感じが、自分の事言われてるみたいで、そんでもって七尾さんに励まされてるみたいで好きです!あとベースシンセがタイプです!)
・蒼い魚
(寄り添ってくれる感じのメロディーとリリックが好きです。
笑ったよ生まれたまんまの顔でって言うリリックが特に好きだと思いました。人が心から笑う時って子供の頃と変わらないと思うから)
・Leaving Heaven
(なんか、七尾さんの体験と言うか実際のストーリーがこの歌の背景にある感じがするんですけど、どれほど遠くにいてもこころは隣にいたって言う言葉に強い気持ちを感じましたし共感しました。)
・迷子犬を探して
(こちらは歌い方がのびのびしてて曲調もアップテンポで聴きやすくて好きです。
でも内容は犬が迷子になってしまったと言う内容なので、神様ほんと探してって思いました)
・圏内の歌
(七尾さんてTwitterとかでも政治とか社会に対しておかしいって思う事があれば発信されてて私もそれに共感することが多いんですけど、素直な七尾さんの気持ちなんだなって、世の中の事考えて、命をつなぐなんて言い方したら大げさに聞こえるかもしれませんけど、そういう強いメッセージを感じて好きな曲です。)
・アブラカタブラ
(曲の構成は結構トリッキーな感じになっていて説明が難しいので一言で言うとグルーヴが好きです!)
『雨に撃たえば…!』『ヘヴンリィ・パンク:アダージョ』『ひきがたり・ものがたり』は自分の青春と分かちがたく、刺さりすぎてしまうし、聴き入りすぎてしまって選曲するのに苦労しました…。発売日に買いに走った『911FANTASIA』は3枚組で、とんでもなくラディカルなゲームソフトをプレイするようなドキドキを感じつつ、聴き進めていったのをよく憶えています。この、音とポエジーの壮大な冒険…。鼻歌のような可塑性を残したまま、ものすごい高みに到達した楽曲たち…。間違いなく自分が一番影響を受けた日本語の音楽です。感謝しかありません。僕だけじゃなく、本当に多くのミュージシャンが旅人さんに強烈に影響を受けていると思うし、旅人さんの音楽に触発された才能はこれからもどんどん現れ続けるでしょう。なんか、自分ごとで恐縮ですが、このタイミングで自分の原点の一つである七尾旅人の音楽に改めて向き合うことができて良かったです。これからもずっと聴き続けます。
上京してすぐ、2006年頃、旅人さんのライブに足繁く通っていた。凄まじい集中力と緊張感のなか、一曲歌い終えるたびに10歳は年をとったような表情をされていたのが印象的だった。あの頃に同じ空間で目の当たりにした七尾旅人という音楽の怪物が、いまの僕に与えた影響は計り知れない。歌い続けてくれて、作品を残してくれて、ほんとうに感謝しています。それにしても選曲に際してひととおり聴いて、改めてなんと多彩で独特なソングライティングだと驚く。ずっと、刺激的です
自分がhip-hopに心を奪われるより以前からとても沢山の影響を受けました。必然的にその頃の曲を今もよく聴いているので、今回のサブスク解禁で友人にも気軽にお勧めし易くなったので嬉しいです。
名曲ばかりで選びきれず、頭を抱えながら10曲絞りました…!
どれも私にとってかけがえのない人生のBGMなのですが、その中でも特に「迷子犬を探して」は、聴くたびとても染み入り、ほっと泣いてしまいます。
犬も飼ってないのに何故こんなに気持ちを動かされてしまうんだろうと不思議に思ったのですが、どうも私はこの〈迷子になったあの子〉のことを、自分の大切な人たちの存在と重ねているようです。何度聞いても、こんなに優しい歌はないな、と思います。
「スロウ・スロウ・トレイン」も、地元にいた頃に湘南新宿ラインを使っていた私にとっては聴く度に当時にトリップしてしまう特別な曲だし、「サーカスナイト」も齊藤陽道さんのドキュメンタリー映画「うたのはじまり」の1シーンの旅人さんのライブの様子が浮かんできます。こないだも「夜、光る」を聴きながらずっと徹夜で漫画を描いていたので、多分この先ずっと「夜、光る」を聴くたびに深夜にペンを走らせたあの時間を思い出すのだろうな、と思います。
そんな、自分の人生を折々で彩ってくれた大事な曲と、その曲たちを作ってくれた旅人さんに感謝を伝えたいとずっと思っていました。
これからも旅人さんの音楽がそこに在り続けてくれたら、私はしぶとくこの世を生き続けていけるような気がします。
いつも、本当にありがとうございます。
いざ10曲選んでみるとポップな曲ばかりになってしまい、旅人さん的にはつまらないかもしれませんが…、やっぱりこの10曲です。混沌とした思考と創作の中からぽつんと産まれた純粋無垢なポップスが僕は好きみたいです。Rollin’はその究極ですよね。Almost Blueは僕のピアノが完全に旅人さんの音楽の一部になっていて、自分が参加している気がしないのが不思議です。いろんなミュージシャンと共演してますが、こんな感覚になるのは旅人さんだけです。
これまでの人生で、七尾さんの作品に息を繋いでもらった時間は大きすぎる。
本物の血や 肌のようになっています。
この世界であなたの音楽に出会えたことを心から大事に想っています。これからも。
旅人さんの音楽に出会ってから、一曲一曲の中にあるドラマチックな世界を想像するようになりました。
ガットギターで奏でる旅人さんの繊細で暖かい音。
まっすぐで包み込むような歌声、爆発するような愛のある怒りもずっとずっと大好きです。
初期作品が配信開始されたことで、僕と同世代の方々など、作品を新鮮に耳にする機会が増えたと思うとわくわくします。
七尾さんのつくられる音楽をこれからもめちゃくちゃ楽しみに待っています。
どうかお体にお気をつけて。七尾さんの音楽が、七尾さんのことが大好きです。
そしてもしよろしければまたいつかご一緒したいです…!(それと漫画一緒に読みたいです!)
「私は3.11の大震災を経験していないので、ただ漠然とあった悲しみが、「Memory Lane」「圏内の歌」を通して具体的で身近なものになった。 たくさん聴いて、たくさん想像した。目を瞑りながら聴くと、そこに女の子や、おばあさんや、家族の姿がみえる。旅人さんの優しい声とシンプルなメロディが、迷子になってしまった魂の足元を照らしながら、寄り添って歩いているように感じる。 選ばせていただいた曲はどれも大好きで、あんな時に聴いたな、とか聴いてきた時間の記憶も浮かび上がってきてノスタルジックな気持ちになる。「迷子犬を探して」は共演させていただいた舞台「未練の幽霊と怪物」を思い出すし、「スロウ・スロウ・トレイン」や「rollin’ rollin’」は楽しかった色んな夜の時間が断片的に脳裏に浮かぶ。「Across Africa」はまだ行ったことのないアフリカの景色が、風に吹かれながら飛ぶ鳥の目線で鮮やかに見えてくる。 旅人さんのうたは鎮魂歌だといつも思う。魂や、時間や、土地、さまざまなものに対する鎮魂。そうすることでそこからまた先に進める。 旅人さん、素晴らしい音楽をいつもありがとうございます。」
私がはじめて七尾さんの音楽と出会ったのは19歳でした。
17歳で上京してから仕事で目まぐるしい日々が続き、人に疲れ、全てを辞めて実家の一室に引きこもっていた頃、
人の声や気配を感じることにも疲弊していたけれど、ネットで色々なCDを見ながら「どれか一枚買って、その人の声を慣れるまで聴こう」
と決めて、まだ知らなかった七尾旅人さんのヘヴンリィ・パンク:アダージョをジャケットだけ見て購入しそこから毎日聴いていました。
今思うととてつもなくラッキーな出会いです。
今回1番目に選曲したチークは、少し外へ散歩に行くことが出来るようになった頃に玄関で聴いてから出る習慣にしていた曲で、
聴くと今でも外に対する恐怖心のような、何もないような感覚が蘇ります。
また、10番目に選曲したいつかは七尾旅人さんの制作された曲のなかで今の私が最も好きな曲です。
七尾さんの曲を聴いていると、生々しさと同時に生きることが一つのおとぎ話のように感じられます。
このときめきのような感覚は音楽を介してでしか感じ得ないものなのかなと思います。
どんどん変容してゆく、曲そのものが生きている七尾さんの音楽を私も生きて追っていたいです。
「忘れもしない、上京したての二十歳ごろ。震災があって。
小さな部屋で、朝も夜もギターを抱えるばかりの日々、電撃が走るかのように、旅人さんとの出逢いがありました。ライブにお誘いしてくださり観客として客席に座っていたら、突然ステージにお呼ばれして演奏することになったり、ライブの後、みんなでお散歩していたら嵐になって、まだ歌い足りないし弾き足りないよ、と旅人さんが呟いて、終電には乗らず、飴屋法水さんのおうちになだれ込んで、朝まで歌ったり踊ったり。旅人さんと共に過ごした奇跡のような音楽の時間は、数えきれないほどあります。その全てが、当時、消えてなくなりそうなほど儚いこころの、どんな孤独の時間も拭い去ってくれたのでした。1日の光の動きをただ見ていたいがために、列車に一人で乗っては、終点まで行って戻ってくる、を繰り返していた、その時ずっと聴いていたのが「ヘヴンリィ・パンク:アダージョ」です。2枚のCDを交互に、ポータブルCDプレイヤーに入れて聴いていました。その間、強烈な”君”の気配がまとわりついて、それは天使なのか音楽なのか、わからないけれど、列車の床の影が伸縮する、世界の境界がどこまでも曖昧になっていく中で、脳裏にシルエットが焼き付いていったことを覚えています。その”君”は、今も確かに私の中に存在していて、時折ノックしてきては、背中合わせでぽつぽつと会話する存在です。
この世界には、目には見えないけれど、確かに繋いでいてくれる存在があることを、旅人さんの楽曲と、音楽への姿勢から授けてもらったような気持ちでいます。
10曲なんてとても選びきれないほど、溢れんばかりの名曲群がかたちを変えて世に放たれること、本当におめでとうございます。
ずっとずっと届いてゆきますように。 青葉市子」
つい先日、1度もリハーサルなしにステージで旅人さんの曲をカバーして歌う、という夢を見ました。
え?え?となって、手元にある譜面をめくり、その場で歌いたい曲を決めてマイクを握り、いざ!という肝心なところで、目が覚めてしまいました。
旅人さんの歌は、いつもわたしの側で、生活の中で鳴ってくれています。魂を慰めてくれたり、心を揺さぶってくれたり、また音楽へ向かう力を与えてくれたり。わたしにとってのお守りなんだと思います。
だから中途半端な気持ちでカバーできる曲なんて到底ないのですが、もしこの先、わたしが歌を歌う者になるならば、是非カバーしたい曲を選曲してみようと思いました。
好きな曲ばかりなのでテーマがないと選びきれないからというのもありますが、あの夢の続きも気になります。
旅人さん。旅人さんに誘っていただいて参加したTELE○POTIONのレコーディングでの出来事が、わたしの人生の栄養になっています。いつか、徳島の街をゆっくり案内させてくださいね。
まずはひょんなことから聴く機会を得た、911FANTASIA。なにか、”怖いもの”を聴いてしまったというのが最初の印象で何度も聴いて愛聴した訳ではなく、蓋をしてしまった。ただ、ずっと細部まで憶えていたので強烈に脳裏に焼き付いているようで、今回のコメントを頼まれてすぐ思いついたのがこのアルバム。2022年夏の今聴きなおしてみたが、ポエトリーでもフォークでもアヴァンギャルドでもフリージャズでもない紛れもない七尾旅人の世界で、凄すぎる。これは当時の自分は解釈を逃げたんだろうなと今認める。
数年経ち、DOMMUNEの開局時にもよくご一緒させてもらった。自分もあの喧騒の中にいて、その当時の記憶は割と旅人くんの音楽と共にある。当時の辛かったこと、蒼い思い出と共に鳴ってる数曲。そして、熊本にて奇妙な親友である坂口恭平のイベントで共演させてもらった記憶。その辺から選びました。
決して敵わないと思ってるアーティストっていまして、旅人くんはその1人です。
サブスク解禁おめでとうございます!
初期の旅人さんはオルタナもテクノもフォークもブラジル音楽も全部を飲み込んで、かつそれらを超越して一つにまとめ上げてしまうほど、本人の個性が強烈で、本当に天才にしか作れない奇跡の音楽ーーーーーって印象でした。
当時、世界的に見てもそんな音楽は無かった。
初めてヘヴンリィを聴いた時は「こんなアルバムが存在しているのに、自分が音楽やる意味あるかな」って思ったほど。
てかみんな思ったよね?
ここ数年でYouTube以降のボーダレスな感覚の天才がめっちゃ出て来てて、そんな今だからこそ旅人さんが20年以上前に作った音楽を聴いてぶっ飛ぶべきだと思います。
プレイリストは初期と現在の旅人さんを繋ぐようなイメージで考えました。
俺らの大好きな七尾旅人はこんなにもすげーんだぞ!
七尾さんの歌はもちろんビートのバリエーションも世界観も多種多様で聴きながら本当に迷いました。
一曲目に選ばせて頂いたTELE◯POTIONは思い入れもありますし、最近もよく聴いている楽曲です。
七尾さんの音楽を聴いた時にだけ込み上げてくる感情があるって思います。
私はDJをしているので、本来は、自分の思い入れや、思い出は抜きにして、七尾旅人君の長いキャリアの中から、今、音楽として面白く聴こえる曲を選びたい気持ちがあったのですが、まとまった時間が取れず、10曲を選んでコメントもくださいという依頼を受けてから、少し時間が経ってしまいました。
なので、むしろ真逆に、自分の体験に基づいて印象に残っている曲を直感で選ぶことにします(なので、一部の時代に偏っています。悪しからず)。
七尾旅人君の音楽を私に勧めてくれたのば、自分が出ているイベントによく遊びに来ていた、当時学生だったN君だ。
内気な雰囲気のN君だが、国立大学に通う聡明な若者で自分でミニコミを作っている行動的な面もあった。
彼からもらったミニコミでインタビューされていたのが、「911 FANTASIA」をリリースして少し経った頃の七尾旅人だった。
N君から借りた「911 FANTASIA」を聴いて衝撃を受けた私が、河口湖かどこかのフェスティバルで七尾旅人君と共演したのは、多分2008年の秋だったと思う。
ルイ・アームストロング「What a Wonderful World」のカバーが衝撃的だった。
お客さんに、目を瞑って想像力を膨らませて聴いてほしいと言って演奏した、即興的に形を変えて膨張していくその曲は、どこまでもどこまでも、私たちの意識を遥か遠くへ連れて行く。
それは、小さな針の穴の先に無限の宇宙を見せる魔術師のようだった。
旅人君の魅力の一つは、その留まることを知らない想像力、そしてその想像力を駆使して作り上げる大きな物語だと思う。
「シャッター商店街のマイルスデイビス」は、演劇的とも言える多彩な声色を駆使した、“歌”の可能性の拡張の試みであり、ストーリー・テラー、語り部としての魅力が記録されている。
2010年前後のライブではよく演奏されていたはずだ。
私は七尾旅人君と一緒に曲を作ったことがあり、その関係で、2010年前後は、よく同じイベントに呼ばれたり、共演する機会があった。
「どんどん季節は流れて」は、その頃毎回演奏されていた、心地良くもビターなソウル風味のポップ・ソングで、印象に残っている。
恵比寿のガーデンプレイスがあるエリアでの野外イベントで初めて聴いたような気がする。
確か秋で、少し肌寒い気候だった。
中目黒のタイ料理屋やバー、当時の自分の生活、街の景色を思い出す。
どんどん季節は流れ、あの頃の景色も、気持ちも、もう朧げな記憶の中にしかない。
自分が関わった曲を選ぶのは気が引けるのだが、個人的に印象に残っている曲ということだと、やはりその曲「Rollin’ Rollin’」を選ばないわけにはいかない。
自由が丘のリハーサル・スタジオに、キーボードのドリアン君も含め3人で集まり、ああでもない、こうでもないと曲を構成していき、私はその場で歌詞を書いた。
その日の帰り、全身がびしょ濡れになるような突発的で強い雨が降り、持っていった機材が濡れないように抱えて帰ったのを覚えている。
帰宅し確かめると機材は壊れていなかった。
皆で作った曲を聴き返し、良い曲だなと思った。
正式に録音されていないと思うので、ここでは選ぶことはできないのだが、そのくらいの時期に良く演奏されていた、ルー・リード「ワイルドサイドを歩け」の日本語カバーが絶品だということも記しておく。